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CO2削減と燃料の効率化:持続可能な物流の未来
地球温暖化が深刻化する現代において、あらゆる産業に対してCO2排出量の削減が強く求められています。特に、世界の物流を支える海運業界は、国際間の大量輸送を可能にする一方で、化石燃料への依存が高く、温室効果ガス排出の大きな原因の一つでもあります。そのような中で、御前崎海運グループは、持続可能な物流の実現に向けて、CO2削減と燃料効率化に関するさまざまな取り組みを行っています。
■海運におけるCO2削減の課題
海運業は、トラックや航空に比べて単位輸送量あたりのCO2排出量が少ないとされる一方で、世界全体のCO2排出量のおよそ2〜3%を占めているといわれています。この数字は一見小さく見えるかもしれませんが、海運が世界の貿易の約90%を担っていることを踏まえると、その影響力は決して小さくありません。燃料は主に重油(C重油・A重油)に依存しており、燃焼時に大量のCO2を排出するため、業界全体での対策が急務となっています。
また、海運における航行は天候や荷主のスケジュールによって左右されることが多く、効率的な運航計画の立案が難しいという課題もあります。このような状況下でCO2排出量を削減するには、船舶の運航効率を高め、燃料の選択肢を見直すなど、包括的なアプローチが求められます。
■空船回航の削減と燃料の見直し
御前崎海運グループでは、ガット船船団スケールメリットを活かし、まず船舶の「空船回航率」の削減に取り組んでいます。空船回航とは、貨物を積まずに移動する航海のことで、燃料を消費するにもかかわらず経済的・環境的に無駄が大きいのが特徴です。同社では、配船計画を最適化し、空船航行率を10%未満に抑えることを目標に掲げています。また、イレギュラー発生時にも大切な荷主様の予定を変更することが無いよう、可能な限りガット船船団内にて配船調整を行っております。これにより、無駄な燃料消費を防ぎ、CO2排出量の削減に貢献しています。
また、使用する燃料の見直しも積極的に行っています。従来のC重油は安価でエネルギー効率に優れる反面、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、CO2などの排出量が多いため、環境負荷が大きいという欠点があります。これに対して、御前崎海運グループではA重油専焼船の導入を進めています。A重油はC重油に比べて清浄性が高く、燃焼効率も良いため、CO2排出量を効果的に削減できる燃料とされています。
将来的には、主機メーカー様を中心に各機器メーカー様の開発が進み、LNG(液化天然ガス)や水素、アンモニアといった代替燃料が使用可能な環境が整えば、導入したガット船の建造も視野に入れ、よりクリーンなエネルギーへの転換を進める予定です。これらの燃料はCO2の排出を大幅に削減できる可能性を秘めており、今後の技術革新とインフラ整備が期待されます。
■荷役装置の改善とエネルギー効率化
燃料の見直しに加えて、船舶に搭載される荷役装置のエネルギー効率化もCO2削減に貢献する重要なポイントです。御前崎海運グループでは、将来的にマテリアルハンドラー(資材運搬用の機械)を搭載した船舶の建造、マテリアルハンドラー動力の電気モーターへの移行、さらに、ハイブリッドエネルギー回収システムを搭載し、電気モーターへの転換を進めることを目標としています。 このハイブリッドシステムは、荷役時に発生するエネルギーを回収して再利用することで、全体のエネルギー効率を大幅に向上させると同時に、CO2排出量の削減にもつながります。荷役の効率化は作業時間の短縮にも寄与するため、トータルでの燃料消費削減にも直結します。
■今後の展望:持続可能な海運の実現に向けて
御前崎海運グループでは、ガット船船団を軸に、今後も燃料の高効率化と代替エネルギーへのシフトを進めながら、さらに持続可能な海運の実現に向けて取り組みを強化していきます。特に注目しているのは、AIやIoTを活用した配船システムの高度化です。船舶の動向をリアルタイムで把握し、最適な運航ルートを算出することで、さらなる燃料効率化とCO2排出の削減が見込まれます。
また、国際的な環境基準であるIMO(国際海事機関)の「EEXI(既存船のエネルギー効率指標)」や「CII(炭素強度指標)」などの基準への対応も進めています。これらの基準は、船舶ごとの燃料効率や排出量を評価するもので、企業として環境への責任を果たす上で欠かせない取り組みとなっています。
私たちは、「環境にやさしい海運」を掲げ、経済活動と地球環境の両立を目指しています。その挑戦は、単なる技術革新だけでなく、企業としての姿勢、そして社会全体の意識変革にも関わるものです。今後もより良い未来のために、御前崎海運グループは「仲間とともに、お客様とともに、TOP TEAMを目指して」をスローガンに、地道に、かつ確実に、一歩一歩前進してまいります。