株式会社御前崎海運

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海運業における環境負荷軽減と持続可能な物流のための技術革新


■海洋保全の新たな視点

広大な海洋は、地球の気候調整機能や生物多様性の維持、水産資源の供給など、私たちの生活を支える基盤であり続けてきました。しかし近年、人間活動による環境負荷の増加により、海洋の健全性が急速に損なわれつつあります。中でも、海運業はバラスト水の排出、燃料燃焼による排ガス、航海によるマイクロプラスチックへの影響、船内からの廃棄物処理など、海洋に直接的・間接的な影響を与える業種の一つです。

海洋保全の視点では、単に排出物の削減やエネルギー効率を追求するだけではなく、生態系全体の調和を保ちながら運航するという視座が求められます。御前崎海運グループでは、海洋という“職場”に深く敬意を払うとともに、未来世代に引き継げる豊かな海を守るための多角的な取り組みを実践しています。

■バラスト水と生態系の保全

外航船では、バラスト水問題は、海運業界にとって喫緊の課題です。異なる港で海水を積み下ろす過程で、目に見えない微小な生物が移動し、新しい環境で生態系を乱す「外来種問題」が各地で発生しています。御前崎海運が従事している内航海運でも同様な制約が開始されるのか動向を注視しております。

■船体技術と省エネ革新の融合

海洋保全は、技術革新とも密接に関係しています。御前崎海運グループでは、省エネ性能の高い新造船の導入を進めており、船体設計にも細心の注意を払っています。具体的には、船底に特殊な低摩擦塗装を施すことで水中抵抗を減らし、航行に必要なエネルギーを削減。また、抵抗の少ない船体形状や、低摩擦・低摩耗の船尾管軸受の採用により、推進効率を最大化しています。

近年はAIとセンサーを活用し、気象や海流をリアルタイムで分析して最適な航路を自動で選択するシステムも開発され、有効であれば、導入も検討しています。これにより、燃費の向上とCO2削減に加えて、安全航行や運航コストの最小化にもつながることが期待できます。こうした技術の集積が、省エネと海洋保全の両立という難題に対する一つの答えとなっています。

さらに、油圧式クレーンやハイブリッド荷役装置など、ガット船における荷役作業の省エネ化も推進中。荷役時に発生するエネルギーを抑え、荷役時間を短縮することで、トータルでのエネルギー消費削減を探求しています。

■未来への環境投資とパートナーシップ

持続可能な社会の実現には、一企業だけの努力では限界があります。御前崎海運グループでは、環境技術の開発において、同業他社や自治体との連携による広域的な環境対策にも取り組んでおり、たとえば、地元である大崎上島町では藻場の維持・回復を図るためにアマモの種子採集や選別・播種作業等の藻場保全活動(大崎上島地域の海辺を守る会)に参加しています。単なる業務の一環ではなく、地域社会の一員として海洋保護の輪を広げています。

また、省エネや海洋保全に関する取り組みは、国際海事機関(IMO)が掲げる脱炭素化ロードマップとも連動しており、グローバルスタンダードに則った船舶運航を実践することが、企業としての信頼性や競争力の源泉にもなります。

■持続可能な海運の未来へ

海を使う産業として、海を守る責任を自覚し、行動すること。それが現代の海運企業に求められる最も重要な姿勢です。御前崎海運グループでは、省エネ技術の導入とともに、海洋環境への影響を最小限に抑える包括的なマネジメント体制の構築を目標にしています。

今後は、各機器メーカー様の開発のもと、水素燃料やアンモニア燃料など次世代エネルギーへの移行、さらには造船所と協力してゼロエミッション船の開発といった中長期的な取り組みを視野に入れながら、環境保護と企業成長を両立させる事業モデルを深化させていきます。

私たちの取り組みから始まる革新の波は、日本の海運全体、そして世界の物流の未来へとつながる大きなうねりとなるでしょう。私たちはその先頭に立ち、海洋保全と技術革新の両輪で、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。